形成外科とは

形成外科とは、身体の「形態」と「機能」の両方を医学的に回復・再建することを専門とする診療科です。先天的な体の異常や、ケガややけどによる外傷、がんの手術後の変形などの再建に加え、手足や顔の傷あと、皮膚のたるみやしみといった外見上のお悩みにも対応します。
日常生活の中で生じる「見た目の変化」や「外見に関する悩み」は、単に機能面の問題にとどまらず、心理的ストレスや自己肯定感の低下にもつながることがあります。形成外科では、そうした身体的・精神的側面の双方に配慮しながら、できる限り自然で整った状態を目指した治療を行います。
整形外科や美容外科との違い
形成外科は、しばしば「整形外科」や「美容外科」と混同されることがありますが、それぞれの診療科には明確な違いがあります。
整形外科
骨・関節・筋肉・神経など「運動器」に関する疾患や外傷を専門とする診療科です。骨折、関節の変形、スポーツによるケガ、腰痛、肩こりといった「動作や運動機能」に関する問題を主に扱います。
美容外科
見た目の美しさや若返りを目的とした、美容的なニーズに応じた治療を行います。しわ取り、二重まぶた、豊胸術などが代表例です。
一方で形成外科は、外見上の整えを重視しながらも、医学的必要性に基づいた治療を提供します。たとえば、交通事故による顔面骨折の修復、がん切除後の再建手術、やけどや瘢痕(キズあと)の治療、小児の先天異常(口唇口蓋裂、多指症など)の外科的治療などが該当します。
形成外科の対象となる症状
形成外科では、以下のような見た目や皮膚の変化に関するお悩みを幅広く診療します。
- ケガや切り傷のあとに残る瘢痕(キズあと)やケロイド
- やけどによる皮膚の変形、色素沈着
- 生まれつきの顔や手足の形の異常(例:耳の変形、多指症、陥没乳頭など)
- 目・鼻・唇などの形に関するお悩み、左右差
- 加齢による皮膚のたるみやしわ
- 皮膚や皮下にできる腫瘤(粉瘤、脂肪腫など)
- 皮膚の変色や、瘢痕による違和感・可動域制限などの機能障害
こうした症状は、他人から見て小さな変化でも、本人にとっては深刻なストレスや悩みとなっていることが少なくありません。気になることがあれば、些細なことでも遠慮なくご相談ください。
対象となる疾患(外傷・異常など)
形成外科で扱う代表的な疾患・状態には、以下のようなものがあります。
- 外傷後の変形
- 交通事故や転倒、スポーツ外傷による顔面骨折、皮膚欠損、瘢痕など
- 熱傷(やけど)
- 軽度〜重度のやけど、瘢痕拘縮(関節のつっぱり)の治療
- 先天異常
- 口唇口蓋裂、多指症、小耳症、臍ヘルニアなどの先天性異常に対する外科的治療
- 腫瘍切除後の再建
- 皮膚がん、乳がん、頭頸部がんの術後の組織欠損部に対する再建手術
- 瘢痕・ケロイド
- 手術やケガのあとに生じる肥厚性瘢痕やケロイドなど、盛り上がりを伴う瘢痕に対する治療
- 皮膚・皮下腫瘤
- 粉瘤(アテローム)、脂肪腫(ライポーマ)、血管腫などの腫瘤の摘出手術
- 褥瘡(床ずれ)・慢性創傷
- 高齢者などで生じやすい皮膚の壊死や潰瘍に対する創傷ケアと再建
- 顔面神経麻痺後の変形
- 左右差や表情筋の麻痺による変形を整え、「まばたきできない」「口を閉じにくい」といった機能面の回復も目指します
形成外科で行う主な治療法
形成外科では、病態や目的に応じて、以下のような多様な治療法を選択します。
手術による修復・再建
皮膚や皮下組織を整形または移植し、元の形状・機能に近づける手術です。微細な操作を要する手技が多く、とくに顔や手などの目立つ部位では、傷あとが目立ちにくいよう縫合法にも工夫を凝らします。
レーザー治療
しみ、赤み、色素沈着、血管腫などに対して、皮膚の色調を整える非侵襲的な治療です。乳幼児のあざなどに使用されることもあります。
注射・薬剤治療
ケロイド・肥厚性瘢痕に対するステロイド注射、麻痺症状を軽減する目的のボツリヌス治療、瘢痕に対する内服治療などを、医療的判断に基づいて実施します。
創傷ケア・スキンケア
術後の傷あと、やけどや外傷後の創部、褥瘡、難治性潰瘍に対するスキンケアや創傷処置も重要です。再発予防や皮膚の再生を促すための長期的ケアを行います。
できもの(粉瘤、脂肪腫など)
できものとは
皮膚にしこりや腫れが生じたとき、多くの方が「できもの」と表現されます。この「できもの」には、医学的にはさまざまな種類があり、良性の腫瘍から、まれに悪性の腫瘍(皮膚がん)まで多岐にわたります。
多くの「できもの」は良性で、急いで治療が必要なものではありませんが、まれに悪性のものも存在するため注意が必要です。当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医である院長が、主に良性皮膚・皮下腫瘍の診察および治療を行っております。悪性が疑われる場合には、速やかに適切な専門機関へご紹介いたします。見た目が小さくても、気になるしこりがある場合は、早めのご相談をおすすめします。
良性腫瘍の種類と特徴
良性の皮膚・皮下腫瘍には多くの種類があり、それぞれに特徴があります。当院では、次のような代表的疾患に対応しています。
粉瘤(アテローム)
皮膚の下に袋状の構造ができ、その中に皮脂や老廃物がたまって膨らんだものです。中心に黒い開口部が見えることもあり、炎症を起こすと腫れや痛みを伴います。
脂肪腫(ライポーマ)
皮下脂肪組織が局所的に増殖してできる柔らかいしこりです。痛みはなく、ゆっくりと大きくなる傾向があります。
線維腫
皮膚や皮下の線維成分が増殖したしこりで、比較的硬めの触感を持ちます。虫刺されなどの後に生じることがあり、刺激で増大する場合もあります。
軟線維腫(スキンタッグ)
首やわきの下など、摩擦が多い部位にみられるやわらかい突起状の腫瘤で、加齢により増える傾向があります。いわゆる「イボ」として知られています。
血管腫
皮膚表面に赤みや紫色を呈して盛り上がったもので、血管が異常に増殖した良性腫瘍です。乳児血管腫(いちご状血管腫)は自然退縮することがありますが、血管奇形は自然に消退することはなく、治療が必要な場合もあります。
色素性母斑(ほくろ)
メラニンを産生する色素細胞の増殖により生じる良性腫瘍で、平坦なものから隆起したものまで形状はさまざまです。基本的には良性ですが、悪性黒色腫との鑑別が必要となるケースもあるため、変化に気づいた場合は受診をおすすめします。
よく見られる「できもの」:粉瘤と脂肪腫
当院でも特に多くご相談いただく“できもの”が、「粉瘤(アテローム)」と「脂肪腫(ライポーマ)」です。以下に詳細をご説明します。
粉瘤(アテローム)
症状
皮膚の下にしこりを触れ、中心に黒い点(開口部)を認めることがあります。内容物が排出されると、ドロッとした独特のにおいを伴うことが多いです。炎症や感染を伴うと、赤く腫れ、痛みを生じる炎症性粉瘤となることがあります。
原因
皮膚の表面に袋状の構造(嚢腫)が形成され、そこに皮脂や角質などの老廃物が蓄積することで発生します。明確な原因は不明ですが、体質、皮膚への摩擦、ウイルス感染などが関与している可能性があります。
治療(手術法)
根治には、内容物だけでなく袋(嚢腫)そのものを完全に摘出する必要があります。局所麻酔下にて、皮膚を切開し、嚢腫を丁寧に摘出する日帰り手術が一般的です。再発防止のためには、嚢腫の破裂を避けて摘出することが重要です。
ダウンタイム(副作用)
手術時間は15〜30分程度。縫合した場合は、通常1週間後に抜糸を行います。術後の腫れや内出血は、数日〜1週間程度で軽快します。
適応となる方
しこりが慢性的に同じ部位に生じる方、繰り返し炎症を起こす方、また見た目が気になる方が手術適応となります。
脂肪腫(ライポーマ)
症状
皮膚の下にやわらかく可動性のあるしこりを認め、押すと動くのが特徴です。通常は無痛ですが、大きくなると違和感を生じることがあります。背中や肩、腕などに多くみられ、数cmから10cm以上になることもあります。
原因
脂肪細胞が局所的に増殖することで形成されると考えられています。明確な原因はわかっていませんが、体質や遺伝的要因の関与が指摘されています。
治療(手術法)
経過観察が可能なケースもありますが、大きくなった場合や、神経を圧迫して症状が出る場合、悪性腫瘍(脂肪肉腫など)などとの鑑別が必要な場合には、摘出手術を行います。皮膚の深層に及ぶ場合もあり、慎重な操作が求められます。
ダウンタイム(副作用)
術後の痛みは軽度で、翌日からの日常生活は可能です。抜糸は7日後程度が目安です。
適応となる方
しこりが大きくなってきた方、見た目の問題が気になる方、悪性の可能性が否定できない方には摘出手術を推奨いたします。
よくある質問(Q&A)
- できものがあるだけで受診してもいいですか?
- もちろん可能です。しこりや腫れが気になる場合は、良性・悪性を問わず早めに性状を確認することが大切です。放置すると増大や感染を引き起こすリスクが高まります。
- 粉瘤や脂肪腫は放置しても大丈夫ですか?
- 症状がない場合は経過観察も可能ですが、自然に治ることはありません。炎症を起こすと切開や抗菌薬が必要になることもあるため、早めの対応が望ましいです。
- 手術はその日に受けられますか?
- 原則として診察後に手術日を設定いたしますが、当日の状態や部位によっては即日対応が可能な場合もあります。炎症が強い場合は、まず腫れを落ち着かせてからの処置となります。
- 保険は使えますか?
- 医療的に必要と判断された手術については健康保険が適用されます。美容目的の場合は自費診療となる可能性がありますが、診察時に医師より詳細をご説明いたします。
- 傷あとが目立たないようにできますか?
- 当院では、できるだけ傷あとが目立たないよう配慮したデザインと縫合法で処置を行います。術後のケアについても丁寧にご案内いたします。
ケロイド・肥厚性瘢痕
ケロイド・肥厚性瘢痕とは
けがや手術の傷あとが、通常の経過とは異なり赤く盛り上がって残ることがあります。こうした異常な瘢痕の代表が「ケロイド」および「肥厚性瘢痕」です。いずれも皮膚の治癒過程での過剰な反応により形成され、痛み・かゆみ・つっぱり感、そして外見上の悩みを引き起こすことがあります。
当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、ケロイド・肥厚性瘢痕の状態を的確に診断し、それぞれの症状・進行度に応じた治療法を選択しております。「傷あとがなかなか治らない」「赤みやかゆみがつらい」などのお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
ケロイド・肥厚性瘢痕の症状
ケロイドと肥厚性瘢痕は外見上似ていますが、医学的には以下のように区別されます。
肥厚性瘢痕
傷の範囲内に限局して赤く盛り上がる瘢痕です。時間の経過とともに徐々に平坦化する傾向があります。
ケロイド
傷の範囲を越えて広がり、周囲の皮膚にまで拡大する進行性の瘢痕です。自然治癒しにくく、かゆみや痛みを伴うことが多く、再発もしやすい特徴があります。
どちらの状態も、皮膚が硬くなって盛り上がり、関節部に生じると「ひきつれ」によって動きが制限されることがあります。これにより日常生活に支障をきたすケースや、外見的な悩みが精神的ストレスへとつながることも少なくありません。
ケロイド・肥厚性瘢痕は放置することで悪化する可能性があるため、早期に適切な治療を行うことが重要です。当院では、外見だけでなく、痛みや機能障害なども含めた総合的な治療を提供しております。
ケロイド・肥厚性瘢痕の原因
ケロイドや肥厚性瘢痕の明確な原因は未解明ですが、傷の治癒過程においてコラーゲンが過剰に産生されることで皮膚の再構築が異常に進むことが背景にあります。
「ケロイド体質」という言葉があるように、体質的・遺伝的な要因が関与しているとされ、特に若年層から中年層にかけて発症しやすい傾向があります。
主な発症のきっかけ
- 外傷(切り傷・擦り傷)
- 手術による傷あと(手術創)
- ピアスや刺青による刺激
- ニキビ跡や虫刺され
- ワクチン接種後の皮膚反応
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法について
治療は、症状の程度・部位・経過・患者様のご希望などを総合的に判断して選択されます。当院では以下のような治療法を組み合わせて行っております。
ステロイド注射
炎症を抑えるステロイド薬を瘢痕部位に直接注射する治療法です。腫れや赤み、かゆみなどの症状の緩和に有効で、比較的高い効果が期待できます。症状に応じて複数回の注射が必要となる場合があります。
外用薬治療
ステロイド含有テープや外用薬、抗アレルギー薬、抗凝固薬、保湿剤、シリコンジェルシートなどを用いて、瘢痕の進行を抑えます。軽度の肥厚性瘢痕や術後の再発予防にも使用されます。
圧迫療法
専用のシリコンパッドや弾性包帯、圧迫下着などを用いて物理的に圧力をかけ、瘢痕の増殖を抑える治療法です。特に耳や胸部などのケロイドに有効とされ、術後の再発予防にも適応されます。
手術(瘢痕切除)
瘢痕そのものを外科的に切除し、縫合または皮膚移植や局所皮弁などにより再建を行う方法です。手術単独では再発リスクがあるため、術後にはステロイド注射や圧迫療法などを併用することが推奨されます。
ケロイド・肥厚性瘢痕の手術治療について
治療(手術法)
局所麻酔下で肥厚性瘢痕またはケロイドを切除し、形成外科的縫合法により丁寧に縫合します。術後は再発を予防するために、必要に応じてステロイド注射・圧迫療法などを併用します。
ダウンタイム(副作用)
手術時間は20〜60分程度です。術後は腫れや痛みが数日間持続することがありますが、多くは軽度で、日常生活への影響は最小限に抑えられます。抜糸は通常1週間後が目安となります。
適応となる方
- 明らかに瘢痕が盛り上がっている方
- ステロイドや外用薬で効果が不十分だった方
- 痛み・かゆみ・つっぱり感で日常生活に支障がある方
- 見た目の改善をご希望の方
よくある質問(Q&A)
- ケロイドや肥厚性瘢痕は自然に治ることがありますか?
- 肥厚性瘢痕は時間とともに改善する可能性がありますが、ケロイドは自然に治癒することが難しく、適切な治療が必要です。
- ケロイド体質は本当にあるのでしょうか?
- はい、ケロイド体質とされる方が存在します。過去にピアスや手術などの傷あとがケロイド化した経験がある方は要注意です。
- 手術を受ければケロイドは治りますか?
- 手術は有効な選択肢の一つですが、単独では再発の可能性があります。術後の補助療法(ステロイド注射や圧迫療法)の併用が重要です。
- 保険診療の対象になりますか?
- はい。ケロイドや肥厚性瘢痕の治療は、医療的必要性が認められる場合には健康保険の適用となります。一部の特殊治療については自費診療となる場合がありますが、事前にご説明いたします
- どのタイミングで受診すればよいですか?
- 傷あとが赤く盛り上がってきたり、かゆみや痛みが持続する場合は早期受診をおすすめします。早期治療ほど高い効果が期待できます。
巻き爪・陥入爪
巻き爪・陥入爪とは
巻き爪(まきづめ)とは、爪の両端が内側に強く湾曲し、ドーム状に巻いてしまう状態を指します。一方、陥入爪(かんにゅうそう)は、爪の端が皮膚に食い込むことで痛みや炎症を引き起こす状態です。いずれも、歩行時の痛みや靴の圧迫による不快感や慢性的なストレスなど、日常生活に支障をきたすことの多い疾患です。
当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、爪の形状や皮膚の状態を丁寧に診察し、それぞれの症状に応じた保険診療中心の治療を行っております。「靴が履けないほど痛い」「自分で爪を切るのが怖い」といったお悩みをお持ちの方も、どうぞご相談ください。
巻き爪・陥入爪の症状と違い
巻き爪と陥入爪は同じ意味で使われることもありますが、実際には発症のメカニズムや症状に違いがあります。
巻き爪
爪全体が内側に湾曲していく状態です。爪のカーブが強くなり、皮膚に圧迫を与えることで痛みを生じることがあります。ただし、必ずしも炎症や化膿を伴うわけではありません。見た目の異常に気付いて受診されるケースもあります。
陥入爪
爪の角が皮膚に食い込み、炎症・腫れ・強い痛みを引き起こす状態です。特に足の親指に多く見られ、進行すると出血や膿(うみ)を伴うこともあります。化膿性爪囲炎に進展することもあるため注意が必要です。
巻き爪・陥入爪の原因
巻き爪の原因
- 先天的な爪の形や構造
- 長期間の圧迫(サイズの合わない靴、ハイヒールなど)
- 加齢による爪の乾燥や変形
- 歩き方の癖(外反母趾、浮き指など)
- 深爪や間違った爪の切り方
- 爪矯正後の再発 など
陥入爪の原因
- 深爪(爪の角を深く切る)
- 不適切な爪切り(斜めに切るなど)
- 爪が皮膚に刺さるような成長方向
- きつい靴やハイヒールによる圧迫
- 外傷やスポーツなどによる爪への衝撃
- 肥満やむくみ など
治療について
症状の進行度に応じて、保存的治療から手術療法まで、段階的かつ適切な方法を選択します。当院では、保険診療の範囲内で行える治療を中心に提供しております。
保存的治療
軽度の巻き爪や、炎症のない陥入爪に対しては、以下のような保存療法を行います。
- 正しい爪の切り方の指導
- 靴の選び方、歩き方の指導
- テーピング法(皮膚を外側に引き寄せる)
- コットンパッキング法(爪と皮膚の間にガーゼなどを詰める)
- 矯正器具(クリップ法やワイヤー法)による爪の湾曲矯正
※一部の器具は保険適用外となる場合があります - ガター法
※自由診療
また、細菌感染や炎症を伴う場合には、抗生物質の内服・外用による治療を行い、腫れや痛みの軽減を図ります。
手術療法(フェノール法など)
保存療法で改善がみられない場合や、早期に症状の改善を希望される場合には、手術を行います。当院では、主にフェノール法(フェノール焼灼法)を採用しています。
手術法(フェノール法)
局所麻酔を行い、皮膚に食い込んでいる爪の一部を切除し、爪母(爪の根元)にフェノールという薬剤を塗布して焼灼し、再発を防ぎます。施術時間は10〜30分程度の日帰り手術で、再発率が低いとされています。
ダウンタイム(副作用)
術後2〜3日で歩行可能となり、日常生活にもほぼ支障はありません。痛みは軽度で、多くの場合数日で落ち着きます。ただし、運動や激しい動きは1週間程度控えていただく必要があります。
適応となる方
- 保存的治療で効果がなかった方
- 繰り返す炎症や化膿に悩まされている方
- 爪の変形が明らかで、生活に支障がある方
- 短期間での改善をご希望の方
よくある質問(Q&A)
- 巻き爪と陥入爪、どちらかわからなくても受診できますか?
- はい、もちろん可能です。初期段階では両者の見分けが難しいこともあり、正確な診断が非常に重要です。状態を丁寧に確認し、最適な治療方針をご提案いたします。
- 自分で爪を切って悪化しました。受診したほうがいいですか?
- はい。無理な自己処理により、かえって悪化させてしまうことがあります。痛みや出血、腫れがある場合は早期受診をおすすめします。
- 手術は痛いですか?
- 局所麻酔を行うため、施術中の痛みはほとんどありません。術後に軽度の痛みや違和感が出ることもありますが、通常は数日で軽快します。
- 手術後に再発することはありますか?
- フェノール法は再発率が低いとされている治療法ですが、体質や歩き方・靴の影響などで再発する可能性もあります。予防のためのセルフケアも重要です。
- 保険で治療できますか?
- はい。当院で行っている巻き爪・陥入爪の多くの治療(フェノール法、部分爪切除、保存療法など)は健康保険の適用範囲内で行っております。詳細は診察時にご説明いたします。
眼瞼下垂症
眼瞼下垂症とは
眼瞼下垂(がんけんかすい)とは、上まぶたが正常な位置よりも下がり、目が開けにくくなる状態を指します。まぶたの筋肉や腱膜が加齢や外的刺激などにより緩むことで生じ、視野が狭くなる、まぶたが重く感じる、見た目の印象が変わるなど、日常生活にさまざまな影響を及ぼすことがあります。
当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、眼瞼下垂の診断から手術治療までを一貫した治療を提供しています。「視界が狭くて見えづらい」「目の開きが悪く疲れやすい」「見た目が気になる」といった症状でお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
眼瞼下垂の症状
眼瞼下垂では、まぶたが下がることで目の開きが悪くなり、次のような症状が現れます。
- 視野の上側が遮られて見えにくくなる
- 額の筋肉(前頭筋)を使って目を開けようとするため、額のしわが増える、眉毛が上がる
- 慢性的な目の疲れ、肩こり、頭痛などが起こる
- 長時間の読書や運転、パソコン作業などで目が非常に疲れやすくなる
- 見た目として「眠たそう」「老けた印象」などの外見的変化が生じる
眼瞼下垂は、機能的な問題だけでなく、表情の印象や心理的ストレスにも大きく影響します。
眼瞼下垂の原因
眼瞼下垂の主な原因には、以下のようなものがあります。
加齢性眼瞼下垂
加齢により、まぶたを引き上げる筋肉(眼瞼挙筋)とまぶたをつなぐ腱膜が緩んだり外れたりすることで発症します。
コンタクトレンズの長期使用
特にハードコンタクトレンズの長期使用により、まぶたへの刺激で腱膜が傷み、眼瞼下垂を引き起こすことがあります。
外傷・手術歴
外傷や手術後の影響で筋肉や腱膜に障害が生じた場合。
先天性眼瞼下垂
生まれつき眼瞼挙筋が未発達または機能が弱い状態。
神経・筋疾患に伴うもの
脳梗塞や脳動脈瘤、脳腫瘍による動眼神経麻痺や、重症筋無力症などの筋疾患により発症することもあります。
症状や原因によって、治療法は異なります。正確な診断が必要です。
眼瞼下垂の手術治療
当院では、機能障害を伴う眼瞼下垂に対して、保険診療適用の範囲内で手術治療を行っています。患者様の症状や解剖学的状態に応じて、以下の3つの術式から最適な方法を選択いたします。
保険適用となる眼瞼下垂とは?
眼瞼下垂手術が保険診療の適用となるのは、「美容目的」ではなく、日常生活に支障をきたしていると医師が判断する「機能的眼瞼下垂」の場合です。
具体的な適用基準は以下の通りです。
- 上まぶたの縁が黒目の中心にかかっており、視野を妨げている(MRD1:3.0mm以下)
- 額の筋肉を無意識に使って目を開けており、肩こりや頭痛を伴う
- 長時間の作業で眼精疲労が強い
- 加齢やコンタクトレンズ使用によりまぶたの開きが悪くなった
- 診察で眼瞼挙筋の筋力低下が認められる
視野検査や視診、問診、写真記録などにより、医師が総合的に診断いたします。
手術法の種類
挙筋前転術(挙筋腱膜前転法)
最も一般的に行われている術式で、加齢やコンタクトレンズの長期使用などによりゆるんだ「挙筋腱膜」を修復し、目の開きを改善します。
手術法
眼瞼挙筋とまぶたをつなぐ腱膜がゆるんでいる場合に、腱膜を切開して瞼板へしっかりと再固定することで開瞼力を回復させます。アプローチは皮膚側または結膜側から選択し、局所麻酔下の日帰り手術で行います。
ダウンタイム(副作用)
手術時間は片側30〜45分程度。術後はまぶたの腫れや内出血が数日〜1週間程度みられることがあります。軽度の左右差やまぶたの開きの違和感は一時的で、通常は時間とともに改善します。抜糸は術後5〜7日目が目安です。洗顔やメイクは抜糸後から可能です。
適応となる方
挙筋の機能が保たれており、腱膜のゆるみが主因と考えられる軽〜中等度の眼瞼下垂の方。
挙筋短縮術(眼瞼挙筋短縮法)
挙筋腱膜前転だけでは改善が不十分と予測される場合に選択される術式です。筋肉自体を短縮して、まぶたを引き上げる力を強化します。
手術法
挙筋または腱膜の一部を切除・短縮し、瞼板へ再縫合することで開瞼力を増強します。局所麻酔での日帰り手術が可能です。
ダウンタイム(副作用)
腫れや内出血が1週間前後続く場合があります。術後に一時的な開きすぎ、閉じにくさ、左右差を認めることがありますが、多くは時間とともに軽快します。抜糸は術後5〜7日目が目安です。
適応となる方
眼瞼挙筋の機能がやや低下しており、前転術では効果が不十分と考えられる中等度の眼瞼下垂の方や再発例の方。
吊り上げ術(前頭筋スリング法)
まぶたを開ける筋肉(眼瞼挙筋)の機能がほとんどない、またはまったく働かない場合に行う術式で、前頭筋の力を代用してまぶたを引き上げる方法です。
手術法
自家筋膜(太ももの筋膜など)または人工素材(シリコンロッド、ゴアテックス等)を使用し、まぶたと前頭筋を連結します。額の動きによりまぶたが開く仕組みを作ります。局所麻酔または全身麻酔下で行います。
ダウンタイム(副作用)
手術時間は両側で60〜90分程度。術後はまぶたや額に腫れ、内出血、痛みを伴うことがありますが、1〜2週間程度で軽快します。
額のしわが強調されたり、まばたきが不完全になることでドライアイや違和感が出る場合があるため、術後の点眼ケアが重要です。抜糸は通常7日前後で行います。
適応となる方
重度の先天性眼瞼下垂、神経疾患や筋疾患による下垂、あるいは他の術式で改善が得られなかった方。
よくある質問(Q&A)
- 保険で眼瞼下垂の手術は受けられますか?
- はい。視野障害や日常生活への支障がある場合には保険診療が適用されます。診察と検査をもとに適応の可否を判断します。
- 手術後に見た目は変わりますか?
- まぶたがしっかりと開くことで、若々しく明るい印象になる方が多いです。もともとの印象を変えないよう、見た目の調整を行うことも可能です。
- 手術は痛いですか?
- 局所麻酔を行うため、手術中の痛みはほとんどありません。術後に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、数日で軽快します。
- 手術後に開きすぎや閉じにくさはありますか?
- ごくまれに術後に開きすぎや閉じにくさが生じる場合がありますが、多くは一時的なものです。必要に応じて再調整も可能ですのでご安心ください。
- 手術はいつ受けられますか?
- 初診時にまぶたの状態を診察し、必要な検査(挙筋能測定など)を行ったうえで手術日を決定いたします。日帰り手術が可能で、術後も丁寧に経過をフォローします。
腋臭症(わきが)
腋臭症(わきが)とは
腋臭症(えきしゅうしょう)、いわゆる「わきが」とは、わきの下から特有の強いにおいが発生する体質のことを指します。疾患としての自覚が薄いこともありますが、症状が強くなるとにおいへの不安から人との距離感を気にするようになったり、人前に出ることが怖くなったりと、精神面に大きな影響を及ぼすことがあります。
当院では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医が、患者様一人ひとりの症状やご希望に応じて、最適な治療法をご提案いたします。自由診療だけでなく、保険診療での手術治療(剪除法)にも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
腋臭症の症状
腋臭症の主な症状は、わきの下からの強い体臭です。ツンとしたにおいが特徴的で、特に思春期以降に目立つようになります。症状の強い方では、
- 「人に近づくのが不安」
- 「満員電車や会議など人が集まる場所で緊張してしまう」
- 「職場や学校での人間関係が気になる」
といった精神的なストレスや自信の喪失に至ることもあります。また、わき汗が多くなることで衣服の黄ばみや湿り、におい移りに悩まされることもあります。
腋臭症の原因
人の体には「エクリン腺」と「アポクリン腺」という2種類の汗腺があります。腋臭症のにおいの原因は、主にアポクリン腺から分泌される汗が、皮膚の常在菌によって分解されることで発生します。
- アポクリン腺の活動は思春期以降に活発になります。
- 遺伝的要因が強く、家族にわきが体質の方がいる場合、発症のリスクが高くなります。
- ホルモンバランスの変化やストレスなどがアポクリン腺を刺激し、症状を悪化させることもあります。
腋臭症の治療法
腋臭症の治療には、外用剤や注射、手術、医療機器による治療などさまざまな選択肢がありますが、健康保険が適用されるのは「剪除法(せんじょほう)」と呼ばれる外科的治療のみです。
その他の治療法(ボツリヌス毒素注射、ミラドライ、レーザー治療など)は、すべて自由診療扱いとなります(※多汗症との併発がある場合、条件付きで一部保険適用となる場合があります)。
剪除法(直視下摘除法・皮弁法)
手術法
わきの下を数センチ切開し、皮膚を皮弁(ひべん)として反転させた状態で、医師が目視下でアポクリン腺を一つひとつ丁寧に除去します。
わきのシワに沿って切開することで、傷あとが目立ちにくくなるよう配慮します。
特徴
アポクリン腺を直視下で確実に除去できるため、再発率が非常に低く、最も根本的な治療法とされています。また、皮膚の深層や筋層には傷をつけないように操作することで、機能障害のリスクを最小限に抑えます。
実施方法
局所麻酔にて行う日帰り手術です。術後はガーゼと固定材で圧迫を行い、出血や腫れを防ぎます。
ダウンタイム(副作用)
剪除法は高い効果が期待できる一方、皮膚を切開する外科手術であるため、一定のダウンタイムが伴います。
- 術後数日は腫れや内出血、軽度の痛み、違和感がみられることがありますが、通常は1週間ほどで軽快します。
- 術後は3日間ほどわきの圧迫固定が必要です。
- 抜糸は術後7~10日目を目安に行います。
- 日常生活は術後1週間程度で復帰可能、運動や重労働は2~4週間後から可能です。
まれに傷あとが赤く残ることがありますが、わきのシワに沿って切開するため、目立ちにくくなるよう配慮しています。
適応となる方
- 中等度以上のにおいがある方
- 生活や人間関係に支障が出ている方
- ボトックスなどの治療で効果がなかった方
- 保険適用で根本的な治療を希望される方
よくある質問(Q&A)
- 保険で治療できますか?
- はい。においの程度や日常生活への影響をもとに医師が腋臭症と診断した場合、剪除法は保険診療の適用となります。
- 手術を受ければにおいは完全になくなりますか?
- ほとんどの方で大きな改善が見られます。アポクリン腺を可能な限り除去するため、再発率は非常に低いとされていますが、ごくまれに軽度のにおいが残る場合もあります。
- 傷あとが気になります。目立ちますか?
- 手術はわきのシワに沿って切開するため、時間の経過とともに傷あとは目立ちにくくなります。ただし、皮膚が薄い方やケロイド・肥厚性瘢痕体質の方では傷あとが目立ちやすい場合もあります。
- においの自己判断ができません。それでも診察を受けて大丈夫ですか?
- もちろんです。ご本人が気づきにくいケースも多いため、気になる場合はぜひご相談ください。医師が客観的に状態を評価し、必要な診断と治療のご提案をいたします。